データ利活用支援

作るだけじゃなく、活用視点でどう寄り添うか。エイトハンドレッドが並走して行ったカゴメのBI構築事例

カゴメ株式会社
  • BIツール
  • CDP構築
  • 内製支援

食を通じて社会課題の解決に取り組むカゴメ株式会社(以下、カゴメ)。エイトハンドレッド社は前身であるマクロミルDMP事業本部時代の2015年から共にカゴメの顧客基盤構築に関わっています。今回はよりミクロな視点で現場の情報を拾い上げるための分析業務設計やBI構築、またシステムの内製化を推進する件でご相談をいただきました。課題解決に中心となって取り組まれた細川さまに、BI構築の背景や導入で得られた成果、社内に起きた変化、今後の展望について弊社テクノロジー本部の関根とともにお話を伺いました。

カゴメ株式会社
飲料、食品、調味料の総合メーカー。「自然を、おいしく、楽しく。」をステートメントに食を通じて社会課題の解決に取り組み、野菜の価値を活かして顧客の健康に貢献する商品を届けている。

細川の写真1

細川 和紀 (ほそかわ・かずき) さま

カゴメ株式会社

営業本部 営業推進部デジタルマーケティンググループ 主任

※所属部署は取材当時。以下敬称略

関根の写真1

関根 大地(せきね・だいち)

株式会社エイトハンドレッド

テクノロジー本部 マネージャー

目次

「もっと現場に寄り添った分析を行いたい」マーケティング活用視点で分析業務設計からBIツールを設計

細川さまの担当領域を教えてください。

細川 私はマーケティングや営業部門におけるデータ・ドリブンマーケティングの推進と定着、データに基づいた意思決定や施策実行ができる環境構築を主なミッションとしています。

領域は大きく2つあり、1つ目は、顧客のペルソナや購買傾向を分析し、それに応じて最適な訴求をおこなうための仕組みづくり、2つ目は、マーケティング部門がBIツールを使いながらマーケットの分析をするうえで着手しやすい環境をどのように整えるかといった領域です。今回、エイトハンドレッド社に相談させていただいたのは、マーケティングにおいてBI※ツールの活用をどう進めていくかということでした。

※「Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略。企業の各部署がそれぞれに蓄積しているデータを、収集して情報集約することで、経営戦略のための意志決定を支援すること

その中で、どのような点が課題だったのでしょうか。

細川 前提として、以前エイトハンドレッド社の前身となるマクロミル社DMP事業本部のサービスを使って顧客分析をしていたときに、継続的にカゴメの商品を購入する顧客が全体売上の一定のボリュームを占めていたことが見えてきたんです。そうしたいわゆるヘビーユーザーが生まれる過程をロングスパンで見ていくためには”個客”に絞り込んだ時系列での情報把握、そこに紐づく情報集約が必要で、まずはCDPの構築に着手しました。

※以前のデータ構築支援事例:「事業を統合し全社で顧客を見るため、マクロミルと挑んだDMP構築」

そのCDP構築においては、弊社の事業全体でお客さまがどのようにカゴメと関わっているのかにウェイトを置いていました。カゴメ全体という視点で見ていたのですが、もう少し事業部門のマーケティングメンバーが各事業部の課題や担当ブランドがどういう状態なのかを把握することができる環境もつくりたいと思っていました。そのために、もう少し現場に寄り添うためのデータ分析のフレームやBIを構築したくエイトハンドレッド社にお声がけした次第になります。過去にCDPを構築したときに使っていたBIツールから全社的に新しいBIツールに切り替わるタイミングでもあったのでそのリプレイスも併せてご相談させていただきました。

本BIツールで分析対象としたカゴメの商品例

パートナー選定をされる中でエイトハンドレッド社を選ばれた決め手はなんだったのでしょうか。

細川 マーケティング領域で活用できるプログラム設計ができる点、ゆくゆくは内製化をしたかったのでそこにどれだけ支援をいただけるか、あとはコストという3点で評価しました。今回は全社のBI構築やDX推進というところの活動であったので、情報システム部門と一緒にパートナーを探していたんですが、マーケティング領域に強い企業や、情報システム領域に強い企業を探す過程でエイトハンドレッド社が挙がってきたという形になります。

関根 弊社としては以前からお付き合いを長くさせていただいているなかで、いわゆるカスタマージャーニーといったマーケティングの認知から購買に至るまでのファネルへの理解は強みがあると自負していました。今回のご相談はシステムの移行と内製化がポイントだったかと思います。以前から導入されていた「Tableau(タブロー)」※1というBIツールから、今回は「Power BI」※2というBIツールにリプレイスすることをベースとして開発を進めるご要望をいただき、設計・構築のプロセスからご一緒させていただきました。設計のプロセスでは、将来的にはBI構築を内製化されたいということでしたので、どういうBIを作るのか、数字を指標化するためにはどのようなデータ処理が必要か、などの弊社のナレッジの部分も共有しながら進めさせていただきました。

※1 ビジュアライズな表現や操作性に定評のあるデータ分析ツール
※2 マイクロソフト社が提供しているノンプログラミングでデータ処理〜レポート作成を実行できるデータ分析ツール

作って終わりではなく、現場視点での細やかな寄り添い。プロデューサー ✕ ディレクター ✕ BIアーキテクトの三位一体で効率的なプロジェクトマネジメント

エイトハンドレッド社から提案されたソリューションで良かった点や印象に残っている点はありますでしょうか?

細川 大きく分けて3点あります。1つ目は、マーケティングの上流から要件を一緒に固めて、それをどうBIに流し込むか一緒にフレームワークを考えられたところです。データ利活用に長けたエイトハンドレッド社の強みはそこで生かしていただけたのかなと。

2つ目は内製化にあたって、どのような形で進めると一番開発効率がいいかを現場でメンバーに提案いただけた点です。システム刷新でこれまで取り扱いのなかったデータ領域を追加するときにどう進めるか不安な点もあったのですが安心して取り組むことができました。

3つ目は何といっても的確で細やかなサポート体制ですね。本領域については初めての内製化の取り組みなので現場のメンバーも疑問点ばかりだったんです。私はこの領域でこういうことを実現したいというイメージはあるんですが、具体的な裏側の仕組みや内製化においてどういうポイントを踏まえるかをIT部門に細かく翻訳して伝えてまわるというのはなかなか難しくて。

実際、関根さんはプロジェクトがキックオフしてから完了までどのようなステップで進められたのでしょうか。

関根 通常のプロジェクトのように、要件定義→設計→実装→検証といったフローは基本的に変わりません。今回は要件定義のあと、すぐにモックアップを作ったことが大きなポイントだったと考えています。

一般的なフロート今回のフローの比較図

実際にモノを見てみると違和感に早く気付けて、ここをもう少し工夫したいとか現場の肌感覚がすぐにわかります。要件を固めて最後に一気に作るのではなく、モックを作って意見交換しながらブラッシュアップしていったので柔軟なサポートとシステム構築を実現できたと思っています。スタートして2カ月でひとつ目のダッシュボードのモックアップを仕上げて、そこから3カ月後に4つのダッシュボードを構築しました。マイルストーンという点では一定の納期目標がありつつも、現場と丁寧にディスカッションを重ね、スケジュールは柔軟に調整しながら進めていった形ですね。

ウォーターフォール型ではなくアジャイル型開発で進められたということですね。エイトハンドレッド社のメンバーは何名体制で進められたのでしょうか。

関根 私含めて3名で進めました。マクロミル時代からカゴメに常駐していて、カゴメさまの購買/調査データに長けたマーケター、もう一人はBIツールを熟知したBIエンジニアがいたので、そこの連携をうまく取りつつ、私がプロデューサーとしてビジネス判断や意思決定などのマネジメントをおこなった形です。

細川 私から要望だけ社内に伝えてもどう解決していいか担当者は困ってしまいますが、関根さんをはじめ、現場のメンバーから丁寧なサポートをいただけたので意思決定もスムーズでした。同じ方向を見ながら内製化を進められて、我々がどんな業務をするのか具体的なイメージを持ってプロジェクトを進められたのは本当に良かったなと思います。

カゴメ⇔エイトハンドレッドのコミュニケーションフロー

すごくバランスのとれた進め方ですよね。その他、内製化支援で教育や運用スキームの設計など工夫された点を教えてください。

関根 ただ設計の構造や事実のみ説明するのではなく、なぜこういう設計にしているのか、設計によるメリットなどの意図やロジックを丁寧にするように意識しました。ツールが完成しても、実際に使いこなせないと意味がありません。まさに、宝の持ち腐れです。だからこそ、活用する視点に立ったときにそれをどう管理するのかといったところまで寄り添うことが大切だなと考えています。ご要望に合わせて、今後は弊社側からナレッジを共有する研修や啓発活動のご提案もさせていただきたいと考えています。

商品認知から購入意向、店頭接触… ブランドごとにスコアを可視化。マーケティング・ブランド課題のヒントを見つけやすくなった

システム導入後の効果や反響をお聞かせください。

細川 今回は、商品の認知から購入意向、店頭接触、トライアル、リピーターへの段階の流れを、ブランドごとに可視化するBIを構築することが主でした。今まではそうした共通のフレームで自分の担当商品を見る機会があまりなかったんです。今回の導入でそのフレームが社内に浸透して、マーケティングの企画担当者が自ブランドのKPI指標として導入しているのは地固めの意味で大きな変化だなと。

また、全社的に活用を進めている「Power BI」を使って顧客の詳細なデータが可視化され、各担当者がそれぞれ見ていた情報がひとつに集約されるようになりました。今回1つの型が出来たことで、マーケティング部門だけでなく営業部門など各部署から「Power BIを使ってこんな指標が見えないか?」といった意見が出てくるようになったのはすごいことだなと。各人が業務効率化や改善の戦略設計をしやすくするツールとして認識され、次のステップを見据えた意見が出てくるようになったのはすごくうれしかったです。私自身のモチベーションにも繋がりました。

今まで分析でカバーできていなかった指標が可視化され、より戦略設計をしやすくなったということですね。

細川 そうですね。今まではその基盤が「Tableau」だったんですが、外部パートナーが作成したものを活用部署のみに展開するという運用だったため、活用できていたのが限られたメンバーだけだったんですが、今回は全社的に活用を進めている「Power BI」を基盤として全社公開としました。おかげで社内でも活用が広がっていくいい流れができ始めているのかなという印象です。

部署横断型で現場での活用を念頭においた教育支援も

今後の展望を教えてください。

細川 今回構築した5つすべてのBIが社内に浸透して、普段の業務プロセスにしっかり組み込まれた状態を早めに実現したいと思います。BI開発によって課題が可視化されたことで各部門からいろんな声が上がってきていますが、自社で作れるものは社内でトライアルをしてみるつもりです。ただ、どうしても自社でやりきれない部分は引き続きサポートをお願いしたいと考えています。今後もカゴメ社内でのデータ利活用を進めていくパートナーとして環境構築、情報の提供、支援などをエイトハンドレッド社に期待したいですね。

関根 弊社の事業領域はシステム開発だけではなく、マーケティングの一気通貫のコンサルティングを提供するといった点に強みがあります。今後、現場でどのように活用していくかを念頭に置きつつ、他部署の方々でもBIを使いこなせるように、教育支援・研修などで現場への浸透をぜひご支援させていただきたいです。

Case Studies

データ利活用支援

システムと現場をつなぐ“ビジネスに活かすデータ”の活用支援。ライオンの「Lidea」×DMPプロジェクトに開発リードとして現場浸透とアイデア創出に貢献

ライオン株式会社

  • DMP構築
  • データ分析

マーケティング戦略策定

共に高め合う伴走型コンサルティング。サービス開発からデータ分析まで、マーケティング支援サービス「Custella」を一気通貫支援

三井住友カード株式会社

  • サービス開発
  • データ分析
  • 営業戦略

データ利活用支援

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