データ利活用支援

システムと現場をつなぐ“ビジネスに活かすデータ”の活用支援。ライオンの「Lidea」×DMPプロジェクトに開発リードとして現場浸透とアイデア創出に貢献

ライオン株式会社
  • DMP構築
  • データ分析

「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を経営ビジョンに掲げ、オーラルケアやビューティケアなどの多岐にわたる製品・サービスを提供しているヘルスケア企業のライオン株式会社(以下、ライオン)。同社は、2014年にオウンドメディア「Lidea(リディア)」をローンチし、同時に得られたデータをプロダクト開発に生かし、生活者満足度を向上させるためのDMPを導入しました。エイトハンドレッド社は、同サービスのさらなる改良に向けたリニューアルとともに、2019年末からダッシュボード開発や、現場へのデータ活用を推進する役割として加わりました。今回は、プロジェクト責任者であるエクスペリエンスデザインディレクターの榎本さまに、ダッシュボード開発の背景や導入で得られた成果、今後の展望について、弊社テクノロジー本部1Gの深尾とともにお話を伺いました。

ライオン株式会社
オーラルケアやビューティケアなどの多岐にわたる日用消費財の開発・販売を行うメーカー。経営ビジョンに「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げ、健康を支えるより良い習慣づくりによって、生活者の健康とサステナブルな社会の実現を目指している。

榎本の写真

榎本 裕美子 (えのもと・ゆみこ) さま

ライオン株式会社

エクスペリエンスデザイン/デジタルコミュニケーション開発チーム ディレクター

※所属部署は取材当時。以下敬称略

深尾の写真1

深尾 理奈(ふかお・りな)

株式会社エイトハンドレッド

テクノロジー本部1G コンサルタント(プロジェクトマネージャー)

目次

「システムと現場をつなぐDMPにするために」データ分析やビジネス理解を強みに、歩調を合わせたダッシュボード開発

榎本さまの担当業務を教えてください。

榎本 私はデジタルコミュニケーション開発チームの責任者として、ライオンが運営するオウンドメディア「Lidea(リディア)」の企画運営と、DMP運用・開発を担当しています。主な業務は2つ。1つ目は生活者を理解するために、一人一人の様々な行動ログを収集・蓄積すること。2つ目は、データから日常生活にあるインサイトを発掘し、それに合わせたコミュニケーション戦略立案を行うための分析基盤を整えることです。2018年から約4年、ライオンでのデータ利活用を推進してきました。

榎本 「Lidea」は、生活の悩み解決や暮らしのアイデアなど、お客様の生活を豊かにするようなコンテンツを配信するメディアです。2014年に媒体を立ち上げ、同時にDMPを導入しました。当時は、生活者行動データや、SNS上のライオンのブランドコミュニケーションに関するデータなどをDMPに統合し、それを分析して生活者のインサイトを導き出そうと考えていたようなのですが、そのとき運用していたプラットフォームでは実現が難しかったようで。私が入社した2018年のタイミングでDMPを再開発し、その翌年には「Lidea」も大幅なリニューアルを行いました。

それまでのコンテンツは、「効率的な掃除のやり方」「洗濯のギモン解消」といった自社プロダクトの利用シーンを分かりやすく紹介するようなものがメインでしたが、2019年のリニューアル以降は、「アニメ好き同士の座談会」や「日常のギモンを脳科学者に聞く」といった直接商材とは関係ないようなさまざまな要素を切り口にユーザーの志向性を引き出すコンテンツを盛り込みました。

媒体リニューアルとDMP構築を進められた中で、どのような点が課題だったのでしょうか。

榎本 ひとえに言うと、得られたデータを充分に活用するためのDMP開発ができていなかったんです。「Lidea」のコンテンツを大きくリニューアルしたことで、データの種類や採り方が変わったため、DMP活用をさらに推し進める必要がありました。そこで、これからはDMPを作るだけでなく、得たデータをどう上手く使うかが肝心だと判断し、収集したデータの分析と利活用という新たなフェーズに向けて、データ分析に長けたエイトハンドレッド社にDMPの開発リードとして入っていただきました。

エイトハンドレッド社を選ばれたポイントは何だったのでしょうか?

榎本 実はエイトハンドレッド社とは前身のマクロミル時代からご一緒していて、データリサーチや分析において高い評価をしていました。ですので、ライオンのデータ仕様やビジネス戦略に精通しており、前提条件をスキップしてスピーディに本題に入れる業務理解の高さもポイントのひとつでした。また、分析手法や分析するためのアイデアを取り入れた、現場で使える2つのダッシュボードも開発してもらいました。その際も、当社のビジネスに精通している点がフィットしたと思います。

深尾 弊社としても長くお付き合いさせていただいているなかで、マーケティングリサーチやデータ分析において強みが発揮できると自負していました。その強みを生かしつつ、システムの強みと現場のニーズを理解し、双方の歯車を合致させるべく尽力しています。その中で現場の社員さんが活用できるダッシュボードの開発を進めさせていただきました。

システムと現場の連携強化という課題に対して、どのようなダッシュボードを開発されたのでしょうか?

深尾 ライオンさまとはマーケティングの打ち手の質向上を目的に、市場動向と顧客の双方を見ることができる2つのダッシュボードを開発しました。

深尾 1つ目の「MDB(Marketing Dashboard)」は、売上の動向や市場規模などをチェックできるものです。次のマーケティング戦略を考えるときに、市場の動向を押さえるために使っていただくことを目的に開発しました。もう1つの「CR360(Consumer Real 360)」は、顧客の属性などの基本情報はもちろん、支出傾向・WEB行動・使用商品・生活習慣・家事の価値観など多面的に生活者の特徴を見つけ出す分析が可能です。例えば広告プランニング時には、どういうメディアに狙いたいユーザーとのタッチポイントがあるのかもこのデータから知ることができます。

深尾 自社で新たなプロダクトを発表したときに「MDB」で競合のシェア以上を獲得できるかを逐一追えるようになっていますし、「CR360」では、マーケティング戦略の施策を考える上で、俯瞰して顧客の情報を見られるので、データから狙うべきターゲットのインサイトを見出せる機能になっています。

例えば、「他社が出している”A”という商品は10代の利用者が多いのに対し、自社が出している商品”B”は30代の利用者が多く、利用者層に差がある」と。その中で、まだリーチしていない顧客にどういうアプローチをかけるか、という打ち手を考えるために2つのダッシュボードを活用させていただいていますね。

ダッシュボードを使った現場のデータ活用はどのように推進されたのか教えてください。

榎本 2021年まではDMPプロジェクトで関わっている部署が固定されていたので横のつなぎ込みも難しくうまく連携が取れていなかったんです。それに、DMPで得たデータの活用はライオン全社では事業を先に進めるために重要なことではありつつも、現場からは「何かまた作業が増えるのでは」とネガティブなものとして受け入れられることもありました。現場にデータ活用を浸透させるには、他部署との接点を増やし、現場にもデータ活用の必要性を理解してもらわなければいけません。そこで、そこで、深尾さんチームには、現場のメンバーとの意見交換の分科会を新たに設け、現場の声を吸い上げてもらいました。

深尾 定例会議や分科会それぞれの会議体には、プロジェクトリーダー、アナリスト、BIエンジニア、データベースエンジニアなどのプロフェッショナル人材を参加させ、現場から直接声を聞けるように会議をセッティングしました。また開発過程においても、設計やモックの段階から現場と共有して、現場で見ているアウトプットや観点を加えながらダッシュボードをブラッシュアップしていきました。外部パートナーとして入ることで、現場ではなかなか議論する機会のなかったこともざっくばらんに話せるような雰囲気作りができたのかなと。

榎本 社員全員がデータを見る力を備えるべきだということは、初期にDMPが立ち上がった段階からトップに言われていたことでもあったんです。部門ごとにデータが区切られ、個別最適で分析をしていながらも、それを総合的に分析できていたかというとそうではなくて。ですので、横連携をうまく取っていただきつつ、現場の相互理解を深めていった深尾さんにはすごく助けられました。

新製品・美白ハミガキ「Lightee(ライティー)」のコミュニケーション開発にもDMPを活用、次の打ち手を見据えたサポート

エイトハンドレッド社が加わってからのDMPプロジェクトの成果として実感されていることを教えてください。

榎本 大きな成果としては新たなプロダクトのコミュニケーション開発支援ができたことですね。2021年3月に、「Lightee(ライティー)」という美白ハミガキをリリースしました。美白ハミガキという市場は、すでに開拓されており、ライオンとしてその効能を持ち合わせるプロダクトは複数ありましたが、「ライオンが本気で作った美白※ハミガキ」を掲げる「Lightee」は、ライオンが積み重ねてきた美白研究を経て、大きな期待を込めて打ち出したブランドです。プロダクトリリース時は、認知・期待感の獲得がメインの基本戦略でしたが、継続的な売上獲得のためのコミュニケーションに移行する際、ターゲット毎に購買に繋がる媒体や訴求が大きく異なるため、より細かな検証が必要でした。そこで、「Lightee」のブランドマネージャーやCXプランナーと連携し、DMPで蓄積したデータとCR360を掛け合わせ、ターゲットのインサイト導出のために複数の訴求アプローチをテストしました。そこで得られた示唆をもとに実行に移したCOMでシェアの伸長があったと聞いています。

※本来の歯の白さへ

美白ハミガキ「Lightee」

やはり、マーケティングリサーチの場数を踏んでいるエイトハンドレッド社はデータの特性や抽出目的などを理解した上で分析できるスキルを持っているので、安心して業務をお任せできます。例えば、「Lidea」はコンテンツだけではなく、ポイントプログラム※などさまざまな機能を拡充しており、収集するデータも増えてきています。そのときに、新たなデータでどういう分析をするべきか、他のデータと掛け合わせるとどういった副次効果が生まれるかといった設計プランも一緒に考えてもらえるので、とても心強く思っています。

※Lideaポイントプログラム:ポイントをためて、つかってプレゼントに応募できるプログラム

深尾 そう言ってもらえてうれしいです! 現場の担当者の方と直接やりとりするときは、どういうデータを見たいのかのヒアリングだけでなく、目指すゴールを確認しながら、分析結果の読み解き方や、理解を深めてもらうための話などもしています。常にゴールに向いて関わることで、ご担当者さまがデータ活用のベネフィットを実感することができ、より自分ごととして使いこなせるようになると思います。その上で、次に何をすべきかサイクルを回して新たな打ち手を考えることができます。

榎本 お互いのコミュニケーションが足りないことが一番問題に繋がりやすいと思っているのですが、深尾さんはじめエイトハンドレッド社とは深い関係を築かせていただいていますね。深尾さんには困ったらすぐに相談でき、フィジビリティも担保しつつ意思決定もスムーズにできる環境を整えていただきました。2022年からメンバーが一新し、新たに「一人ひとりが考えて取り組み、プロジェクトを自分ごと化してやっていこう」というチーム方針を掲げました。深尾さんはプロジェクトマネージャーとして、まさに私達が目指していることを率先して体現してくれています。

深尾 業務における連携不足には仕組みや環境の問題もありますが、やはり榎本さんの言う通り、双方のコミュニケーション不足によるものが大きいと考えています。だからこそ私たちはただ要求されていることに応えるだけでなく、事業の次のスコープを見据えて一緒に併走するような関係でありたいなと思っています。

榎本さんは立場やバッググラウンドが違う方にも、相手の方の文脈で魅力を伝えて、巻き込み、プロジェクトにつなげてくださっています。いつも助けられているのであらためてこの場で感謝を伝えさせていただきたいです。

「チームライオンの一員を目指して」 DMP活用事例を増やすために、現場との共同プロジェクトを強化

今後の展望を教えてください。

榎本 これからは現場のDMP活用事例をもっと増やしていきたいと思っています。ダッシュボードなども作って終わりではなく、現場にいかに使ってもらうかが鍵となります。そのためにはより強固な連携が必要になるので、深尾さんたちエイトハンドレッド社の皆さんは、もっとこちらに踏み込んできてほしいと思っています。まだまだ遠慮があると感じるので、より良い未来を作っていくために「チームライオン」の結束を強くしていければな、と。

深尾 そうですね。今榎本さんからいただいた言葉を大切に、チームライオンとして会社の垣根を超えて貢献していきたいです。勝手な野望ではありますが、今後ライオンさまの右腕になれるよう今までよりもっと内側にコミットしていければと思っています。そのためには、榎本さんに繋いでいただいた現場の方々の課題や要望をしっかりヒアリングして深く理解すること、要望に対してタイミングも内容もピンポイントなデータをしっかり届けていくことが重要だと思っています。

そうして現場の方々との共同プロジェクトを、LideaデータやDMPのおかげで現場の業務がより良くなったと感じていただける状態へ成功させることが私たちの使命です。さらには、未解決の現場課題に対して、マーケティングデータの追加整備や新しい分析スキームのトライアル・体系化などの新規企画領域のご支援も力を入れていきたいですね。

Case Studies

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ライオン株式会社

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