決済ビジネスが多様化する中、DX推進でキャッシュレス社会を牽引する三井住友カード株式会社(以下、三井住友カード)。同社が保有するキャッシュレス決済データを活用して企業さまのマーケティングを支援する分析サービス「Custella(カステラ)」を2019年に提供開始しました。エイトハンドレッド社は自社パネルから得たデータの知見を生かし、2020年から同サービスの付加価値向上に取り組んできました。今回は、マーケティング本部の白石さまと細谷さまにエイトハンドレッドの支援で得られた成果、今後の展望について、弊社代表の大畑とコンサルティング第2本部の渡辺とともにお話を伺いました。
三井住友カード株式会社
三井住友フィナンシャルグループ傘下のクレジットカード会社。1967年に設立された住友クレジットサービスを前身とし、「Have a good Cashless.」をスローガンに掲げ、キャッシュレス社会の実現を目指している。
白石 寛樹 (しらいし・ひろき) さま
三井住友カード株式会社
マーケティング本部 データ戦略部長
※以下敬称略
細谷 友樹 (ほそや・ゆうき) さま
三井住友カード株式会社
マーケティング本部 データ戦略部 戦略企画グループ グループ長/シニアデータビジネスプランナー
※以下敬称略
大畑 翔柄(おおはた・しょうへい)
株式会社エイトハンドレッド
代表取締役社長
渡辺 和也(わたなべ・かずや)
株式会社エイトハンドレッド
コンサルティング第2本部 コンサルティング2グループ マネージャー
目次
- 「前例のないマーケティング支援サービスをどう育てるか」業務理解とデータ分析の知見で強みを発揮
- 断片的ではなく、企画からデータ処理・抽出部門まで一気通貫の支援。まるで戦友のような、一心同体の伴走関係
- 「社会に何を提供すればみんながハッピーになるか」受発注の関係を超えて、共に成長できる関係構築を目指す
「前例のないマーケティング支援サービスをどう育てるか」業務理解とデータ分析の知見で強みを発揮
おふたりの担当領域を教えてください。
白石 私はマーケティング本部データ戦略部の部長をしています。このデータ戦略部は2020年に新設され、三井住友カード社内でも立ち上がって間もない部署です。そこで弊社で保有している決済データを元に、カード加盟店(事業者)とカード会員(消費者)の両方のお客さまに新しい価値を提供するべくデータ戦略に取り組んでいます。クレジットに限らないキャッシュレスを推進することでより良い世界をリードしていこうという「Have a good Cashless.」をスローガンに掲げ、同時に社内のDX推進も部のミッションとして行っています。
三井住友カードは世間一般としては決済と与信を提供するカード会社として知られていますが、その体制では今の決済ビジネス競争に打ち勝てません。今回の「Custella」の取り組みは、決済を中心として事業者と消費者の生活全般を豊かにするためのデータビジネスになります。
細谷 私は白石の元で、「Custella」の事業企画と商品サービス企画の指揮を取らせていただいています。サービスの立ち上げから戦略設計まで行ってきました。
「Custella」は三井住友カードが保有するキャッシュレス決済データを統計化し、企業のマーケティングを支援するサービスです。会員の住所や年収などの属性データ、飲食店や百貨店など加盟店様での購買行動データを用いた顧客分析や集客プロモーションサービスを提供し企業さまのマーケティングを支援しています。
世の中では急速にキャッシュレス化が進んでおり、キャッシュレス決済手段の利用増加に伴って、データも膨大に蓄積されてきました。例えば、コンビニやスーパーといった日常の消費、高額な買い物や旅行といった非日常の消費など、消費者のあらゆる行動はデータで捉えられるようになっています。そうしたデータを資産としつつ、顧客理解だけではなく打ち手の実行まで支援している点が他社にはない「Custella」の強みになっています。
サービスを進める中で、どのような点が課題だったのでしょうか?
白石 やはり今まで前例のないサービスだったので、事業を推進するにあたって必要なデータアナリストやビジネスプランナーといったデータ人材や知見が社内に不足していました。他にもデータへの理解やどれをどうマネタイズしていくのか、といった戦略策定の部分で悩んでいたときに、他社と比べてエイトハンドレッド社が抜きん出て良い印象だったのでお願いさせていただきました。
他社と比較検討されたと伺いましたが、エイトハンドレッド社を選ばれた決め手はなんだったのでしょうか。
白石 私は今まで数多くのパートナーと業務委託を経験してきまして、最終的にはやはり人で決めているんです。新規領域を開拓していくことの熱量だとか、我々の熱量への理解、また勢いだけではなくてすごく冷静に全体感を把握しているなと、トータルでとてもバランスが良い印象がありました。当時は2、3社とコンペで比較しながらだったのですが、迷うことなくエイトハンドレッド社にお願いしようと決めた記憶があります。
細谷 私も白石と同じで、担当者の人柄やビジネス理解の部分に強く惹かれました。我々の業務への理解度が非常に高く、そこにフィットしたご提案もいただけて。担当者のデータリテラシーの高さは他社と比較しても抜きん出ていましたね。我々のやりたいことにフィットしているな、と。
まだ出来上がっていないマーケットでデータ分析をサービスとして売っていく中で、やはり協力者の選定はすごく悩んだんです。別の会社だと、「データサイエンスが得意でそういう人員はいます」というところや、「デジタルマーケティングの中で分析もやっています」みたいな、ウェイトが8:2になっているところとか一長一短で。エイトハンドレッド社は、データを処理してどう料理をするかという我々が一番こだわっている「分析」の部分に強みを持ちつつ、テクノロジー人材も状況に応じてバリエーション豊かに支援していただけたので柔軟性の高さも魅力だと思いましたね。
大畑 おっしゃるようにデータ理解やビジネス戦略の部分が課題であったと認識していました。特にローンチ段階でどうPRしていくか、何がクライアントの課題なのかといった戦略部分を一緒に構築していけたのが弊社の強みを発揮できた部分かなと思っています。データ処理に関しては弊社もマーケティングリサーチやソリューション開発に強みがありますので、三井住友カードさまの保有する膨大なデータと弊社が自社パネルを通じて取得した多種多様なデータを掛け合わせることで新たな価値を創り出せたと自負しています。
渡辺 弊社は前身のマクロミル時代から、データビシネスをする上で突き当たる障壁をどうクリアするかといった課題形成や、目的達成のためのチームビルディングなど何度も試行錯誤を重ねてきました。単純にビジネス運用だけではなくそうした部分もアプローチできます、ということを含めて提案させていただきました。
弊社は三井住友カードさまのように決済データは保有していませんが、長く購買データを扱ってきた分、データのソースは違えど最終的にデータを提供するクライアントの課題はすごく共通しているのであまり不安はありませんでしたね。
断片的ではなく、企画からデータ処理・抽出部門まで一気通貫の支援。まるで戦友のような、一心同体の伴走関係
エイトハンドレッド社が加わって、成果として実感されていることを教えてください。
細谷 基本的に弊社に常駐されているので、我々の目指す場所に伴走いただいている感覚が強くありますね。0から1を生み出す作業の初期から合流いただいているので戦友のような気持ちです。「データデリバリーのここだけお願いします」みたいな頼み方ではなくて、提案シーンや購買訴求などそういった部分も渡辺さんたちと徹底的に議論するなど、断片じゃなくすべてにおいて一気通貫で支援いただいてすごく助かっています。目指す成果としてはまだまだこれからですが、売上は順調に上がっています。
白石 我々の悩みを相談して、その解決策を一緒に考えましょうと常に一心同体で動いてくれる密なコミュニケーションがエイトハンドレッド社の強みだなと感じます。もう一切他社の人だとは思っていなくて、細谷が言うように戦友や盟友とも呼べるとてもいい関係を築かせていただいていますね。
渡辺さんには委託先だからとか気にせずにやってほしいと伝えていますし、私も気を遣わず思ったことはすべてその場で伝えています。今までの業務委託にない関係性にチャレンジしている側面もあるので、対等な立場で率直に意見をぶつけ合うことで生まれる価値があると思っています。ときには厳しいことも言いますが、それは相手への信頼がありエイトハンドレッド社へ期待しているからこそです。そうした泥臭い関係を築かせていただいていることに改めて感謝したいです。
エイトハンドレッド社は三井住友カードさまとどのような体制づくりをされたのでしょうか。
渡辺 「Custella」は大きく分けて3つの部門があり、企画プランニング部門、データ抽出処理部門、データ分析部門です。我々はそこにトータルで27名ほど常駐させていただいていました。部門ごとにメンバーがいるので、分野に応じて組織を良くしていくための改善方法を考えたり、必要なツールを一緒に作ったり、あとはメンバーの育成教育やレクチャーであったりと柔軟かつスピーディに関わらせていただきました。
部門が多いと横連携がすごく難しいと思うのですがどのように繋ぎ込みをされましたか?
渡辺 特段コツがあったと言うよりは、ちゃんと連携してコミュニケーションを取ることに尽きますね。部門が分かれていると横の情報の連携がどうしても難しくなりますが、何かミスが起こりそうであれば未然に防ぐための仕組みを作り、コミュニケーションを重ねて改善すべき点はすぐに改善していく。そうしたマネジメントを丁寧に行わせていただいています。
白石 渡辺さんが現場のハブとなって動き回ってくれたから万全の体制で進められたのだと思います。現場の意見を吸い上げて、課題を抽出してすぐに解決に動いてくれて。我々があまり横串で連携できていない部分を補っていただくなどと、まさにキーマン的役割を担っていただきましたね。正直、無くてはならない存在ですよ。
渡辺 恐縮です(笑)。
エイトハンドレッド社から人材育成についても支援があったということでしたが、現場からどのような声がありましたか?
細谷 現場のメンバーからはここまで教えてもらえるんだ、とポジティブな声が多くありました。
我々はデジタルマーケティングというところはまだ弱いので、マーケティング研修はかなり現場のスキルアップに役立ちましたね。デジタルやマーケティングの知見がない中で、基礎的なところから最近のトレンドといった応用的な部分まで丁寧に教えていただきました。データ戦略部はひとえにデータ分析だけをしている部署ではなく、結果的に全社で一番デジタルマーケティングに詳しい状態になっていて。本当に助かりました。
大畑 ありがとうございます。弊社にはそれこそリサーチャーの社員だとか、データのハンドリングに長けた社員だとか、ひとつのことを突き詰めている人材が多いんです。だからバリューチェーンごとにナレッジを共有しやすいのかもしれません。データ分析は地道な作業です。だからこそ、それぞれちゃんとあるべき形があって、定型化して進めることでスムーズな課題解決が実現できます。クライアントの求めるものを理解した上で、ここはこうするのが定石だとか的確なノウハウ共有ができるのは育成面での強みかなと思います。
「社会に何を提供すればみんながハッピーになるか」受発注の関係を超えて、共に成長できる関係構築を目指す
今後の展望をお聞かせください。
白石 まずはまだまだ実力をつけていく時期です。「Custella」をきちんと軌道に乗せた上で、AIを含めてデータ利活用のスキルを積み上げていければなと。
私はエイトハンドレッド社との関係性をより強くして、お互いの力をコアとしてフィールドを拡大したいと思っているので、懲りずに付き合ってくださいというのが最後のお願いですね。これから挑戦する未知の領域にまでぜひ一緒に見てほしいなと思っています。
細谷 白石の言うようにまだ「Custella」を立ち上げて2、3年という状態なので、展望というよりはまずは基盤を固めてしっかり事業化していかなければなりません。そこをエイトハンドレッド社にこれからもサポートいただきたいです。今はキャッシュレス決済データをベースに進めていますが、これはあくまで数あるデータの内のひとつに過ぎません。今後は意識データや位置データなどのデータ種類を拡充し、よりお客さまを理解するトライを積み重ねていかなければと思っています。顧客理解と販促の部分を今進めていますが、将来的にはもっと顧客のニーズに寄り添った機能を拡張していきたいですね。
正直こんな長い付き合いになるとは思ってはいませんでした(笑)。今いらっしゃるメンバーは皆さん本当に優秀で、こうやってご一緒して進められたことが奇跡だなと感じています。我々はエイトハンドレッド社にサポートいただいている立場ですが、今後はエイトハンドレッド社が我々のデータリソースを使ってアナリストを育てるような相乗効果が生まれると良いなと思いますね。
大畑 今後やりたいことや着手すべきこととか、どうアライアンスを組んでやっていくかは今ディスカッションしているところです。我々は自社だけで、ということにはまったくこだわっていないので、他のテクノロジーベンダーも巻き込みつつ三井住友カードさまが今後社会に何を提供すればみんながハッピーになるかということを一緒に考えていければうれしいですね。
渡辺 今はビジネス的にもマインド的にもいろんなことを併走させていただいて本当にありがたい限りです。まだ「Custella」事業が立ち上がったフェーズですが、今後三井住友カードさまは新しい領域をどんどん切り拓かれていく会社だと思っています。三井住友カードさまが目指す場所に我々もご一緒し、共に成長させていただければと願っています。